おがた林太郎個人ブログ

治大国若烹小鮮

「密約」について(その2)

 日本の核の傘についてですが、その論理的な延長として、現在、「宗谷、津軽、大隅、対馬東水道、対馬西水道の5海峡において、日本は国連海洋法条約で認められる12カイリではなく、3カイリを主張している」ということがあります。昭和52年に制定された領海法でそうなったまま、現在まで続いています。


 これは何かというと、12カイリを主張すると5海峡では公海部分がなくなるため、日本の非核三原則の「持ち込ませない」との関係で問題が生ずるということがあり、アメリカの核搭載艦がこの5海峡を越えて日本海に入られなくなることがあります。そこで、日本は意図的に5海峡で3カイリの主張に留め、公海部分を作り、アメリカの核搭載艦の通過を可能にしているという疑いがあります(ただし、この見解を政府は認めていません)。


 ただ、この5海峡で3カイリしか主張しない結果として、これらの海峡には公海部分があり、どの国の軍艦であろうとも好き勝手に通ることが可能になっています。津軽海峡のど真ん中を中国、ロシア、北朝鮮の軍艦(含む核搭載艦)が通っていても何ら問題はないのです。最近、伺ったのは、これらの海峡の公海部分において中国海軍がソナーを落としていっているという話もあります。勿論、それはすべて合法です。


 では、この5海峡で(国連海洋法条約に則って)12カイリを主張するとどうなるのかな、ということを考えました。


 まず、国連海洋法条約で言うところの「国際海峡(国際航行に使用されている海峡)」となりますね。その結果として、通過通航権というものが認められます。国連海洋法条約では国際航行に使用される海峡では、できるだけ幅広く通航の権利を認めようということで、通常の領海よりも制限が緩やかになっています。そういう位置付けになります。


 そして、通過通航権の中で、通過する船舶が満たさなくてはならない義務は以下のようなものです。


【国連海洋法条約第三十九条 通過通航中の船舶及び航空機の義務】

1 船舶及び航空機は、通過通航権を行使している間、次のことを遵守する。

(a) 海峡又はその上空を遅滞なく通過すること。

(b) 武力による威嚇又は武力の行使であって、海峡沿岸国の主権、領土保全若しくは政治的独立に対するもの又はその他の国際連合憲章に規定する国際法の諸原則に違反する方法によるものを差し控えること。

(c) 不可抗力又は遭難により必要とされる場合を除くほか、継続的かつ迅速な通過の通常の形態に付随する活動以外のいかなる活動も差し控えること。

(d) この部の他の関連する規定に従うこと。

2 通過通航中の船舶は、次の事項を遵守する。

(a) 海上における安全のための一般的に受け入れられている国際的な規則、手続及び方式(海上における衝突の予防のための国際規則を含む。)

(b) 船舶からの汚染の防止、軽減及び規制のための一般的に受け入れられている国際的な規則、手続及び方式

(以下略)


 これを読む限り、核搭載艦が国際海峡を通過していくことは禁じられていないように読めます。核搭載艦の通過自体が「武力による威嚇」になるということはないように思います。


 日本は、これまで領海内の核搭載艦の通航はそもそも「沿岸国の平和、秩序又は安全を害する(国連海洋法条約第19条1)」ということで「無害通航に当たらない」として撥ねつけていたのではないかと思いますが、そういう規定は通過通航権にはありません。

【国連海洋法条約第十九条 無害通航の意味】

通航は、沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない限り、無害とされる。無害通航は、この条約及び国際法の他の規則に従って行わなければならない。

2 外国船舶の通航は、当該外国船舶が領海において次の活動のいずれかに従事する場合には、沿岸国の平和、秩序又は安全を害するものとされる。

(a) 武力による威嚇又は武力の行使であって、沿岸国の主権、領土保全若しくは政治的独立に対するもの又はその他の国際連合憲章に規定する国際法の諸原則に違反する方法によるもの

(b) 兵器(種類のいかんを問わない。)を用いる訓練又は演習

(c) 沿岸国の防衛又は安全を害することとなるような情報の収集を目的とする行為

(d) 沿岸国の防衛又は安全に影響を与えることを目的とする宣伝行為

(以下略)


 となると、気になったことは「仮に日本が5海峡で12カイリを主張し、これらの海峡が『国際海峡』扱いになったら、国連海洋法条約上は領海内の核搭載艦の通過を止めることが出来なくなるはず。その結果として、『非核三原則』の持ち込ませないの運用に反することになるのではないか。」ということです。つまり、日本が国連海洋法条約をフルに適用したら、非核三原則と反することが出てくるというおそれです。


 ただ、私は信念として、今の5海峡で3カイリしか主張していないことはおかしいと思います。その結果出来ている公海部分で中国の軍艦がソナーを落とすみたいな挙動不審なことをやっているとしたら尚更です。12カイリをバッチリと主張して、海峡の公海部分をしっかりと塞ぎ(そして、これまで公海部分だったところの大掃除をして)、そこで更に不都合が生じるのであれば、非核三原則のうち「国際海峡部分の通過」については「持ち込ませない」の例外とするような知恵があっていいと思います。


 まあ、その結果として、中、露の核搭載艦についても通過を認めることにならざるを得ないわけですが、どうせ今、公海部分になっているわけですから、別にそこは何の変化もないわけです。少なくとも(国際海峡ではあるものの)領海としての位置づけはあるわけで、今よりは中、露、北朝鮮の軍艦にもグリップが効くようにはなるでしょう。


 もしかしたら、条約の読み方が間違っているかな・・・と気になりますが、まあいいでしょう。今日のエントリーは少し敷衍が足らずに不親切ですね。時間の制限もありまして、ご容赦ください。