治大国若烹小鮮
日米EPA??
国会に上がってきて、書類を見ていたら「日米財界人会議共同声明」なるものがありました。それを見ていて、あることを感じました。以下の話は、最近、とある有識者から聞いた話も含めつつ書いております(勿論、文責は私です。)。
日米財界人会議共同声明ですから、それぞれの財界人の今の関心事項が書いてあります。それを見て、驚きました。まず、最初に出てきたのは「医療技術のイノベーション」でした。医薬品、医療機器・技術、一般用薬品・・・、そんな話です。つまり、米側の要望としては「アメリカの医薬品、医療技術が日本で使えるようにしてほしい」といった感じのことなのです。普通に聞くと、「それが一番最初に出てくるような話か?」と思うかもしれません。けど、実際がそうなのです。
そして、その次が「金融サービス」。つまりは、金融分野での規制緩和を主とする様々な制度改革です。その次が「エネルギーと環境」が来ていますが、ここはお題目が並んでいて、あまり具体的な内容はありません。そして、競争政策、労働政策と来ています。
簡単に纏めると、今のアメリカが日本に求めるものというのはこういうことなのです。制度のハーモナイゼーション、基準認証、規制緩和、そういう感じのことです。あらゆる分野において、アメリカの方式を国際標準にしていく戦略がはっきりと見えてきます。貿易の話も出てきますけども、トップクラスの関心事項にはなっていないということです。
そうやって考えると、日米EPA(経済連携協定)なんてものを考える時にもっと深刻に考えなくてはならないのは、農業関係者というよりも、上記のような分野に携わる人ではないかと思うのです。以前も書きましたが(1 、2 )、農林水産品の輸入は多いですけども、結構無税品目が多いですし、アメリカ側にも農業で言えば「出せない」分野がかなりあります。そこはどうにかすれば上手く、例外の「10%」の中で適当にこなせるような余地はあると言っていいでしょう。
WTO協定的に言えば、TBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)、SPS協定(衛生植物検疫措置の適用に関する協定)、貿易と競争、金融サービス・・・、そんな分野が二国間経済において大きな役割を果たしてきているというのは、かつての古典的なGATT/WTOの世界を知る人間にとってはかなりのパラダイムシフトです。
日本はよく「うちがやるEPAというのは、単なるモノの貿易に関するFTA(自由貿易協定)ではなくて、もっと幅広い分野を包含する。」というようなことを言います。まあ、その裏には「モノの分野だけで勝負すると農業がキツいから、何となくあれこれ含めてやっている。」という意味合いがないわけではありません。しかし、もはや世界のパラダイムは相当程度に転換しつつあり、真の意味で「EPAマイナスFTA(つまり、上記で列挙したような分野)」の部分が主戦場として表に出てきているのかもしれません。さて、日本の中にはそういう認識はまだ根付いていないように思いますが、産業界として日米EPAに進んでいく心構えは本当に出来ているのか、ちょっと気になります。
世の中、どんどん動いています。古典的なFTAの世界を核として考えることなく、別のやり方できちんと日本の対外経済政策を再構築できるかどうか、そういう中で日米EPAは本当に現実的なものなのか、考え込んでしまいました。